暑いからこそチャンスがあったりも、します

夏の盛りがやって来ます。飯田橋教室にいます石村吹雪です。

 

東京の割合真ん中あたり、シブイオンガクスタヂオの夏は、例年、穏やかです。穏やかというのは、あるいは正しくないかもしれません。

 

東京の7月8月の気温が度を超えて暑くなり始めたのは、いつ頃からでしょうか。会社員を辞めたせいでよく覚えている1995年の夏がとても暑くて、最高気温が30度を超える日が何日もあって大騒ぎでした。今はその基準が35度になり、最高気温が30度超えるくらいなら、ちょっと楽だねという感覚です。

 

書いていて思い出しました。私が東京じゅうで妙に(最も)安価なレッスンをやっているボイストレーニング教室を見つけて通い始めたのが、1995年の秋でした。当然まだ、ホームページなんて、なかった時代です。マニアックな雑誌の、文通とか物々交換とかバンドメンバー募集とかそういったコーナーで見つけて手紙を書き、数日後、教室案内のコピー一枚が入った手紙が届き、こちらから電話で申し込みをしました。こうやって書くと大昔のお話ですね。

 

当時の私は、楽曲はたくさん作っていたしギターも弾けたのでライブハウスのオーディションには通ったものの、身長の割にはまるで声量がなく、何を歌っているのか分からない、将来性しか見所がない20代半ばの気分は青年14歳でした。ボイストレーニングの何たるかも知らずに体験レッスンを受けてみたものでした。しかし、そこで出会った自分の、自分とは思えない声、発声の方法が、文字通り人生をかえました。

 

もちろん、その日を境に劇的に声が変わっちゃったなんてことはありません。しかし、それまでの思い込みを悔い改めてみるきっかけになり、その後数年かけて経験して得ていったものは、自分の資質と将来を見直すきっかけになりました。「どうも、自分歌声は人並みにも満たなかったらしい」「でもせっかくだから人並みになるまでは追求してみよう」「そのあとで、何にもなっていなかったら、いよいよ音楽はやめよう」と判断するきっかけができたのです。

 

あれからどれくらい経ったのでしょう。たくさんの出会いに恵まれました。面白いものです。すべては、出会いから始まります。体験レッスンがそのようなものになるとは、本当のところ、今書いてみて思い付いたくらいですが、そうなのです。私にとっては確かにあの体験レッスンがきっかけでした。

 

もちろんこれ、その後でボイストレーナーになってみないか?などという話ではありません。世の中にはいろいろなものの見方があり、そこには共通点があったり、まるで違った角度、アプローチがあります。それによって、どこで、どんな自分を見出すかは案外、わかったものではありません。ですから知らない世界を覗いてみることは、いつでも幾つになっても有意義なことです。

 

暑くなると、シブイオンガクスタヂオの体験申し込みは、ゼロに近くなります。おとなしいものです。穏やかと最初に書きました。静かなものです。夏休みをしたくなる会員さんもなぜか増えます。つまり例年、シブイオンガクスタヂオの夏は、とても予約しやすい状況になります。

 

そこへ来て、新しく講師をお迎えすることにしました。私の採用基準はキャリア優先であり、具体的にはその人がどんなことにどの程度夢中になって来たかです。だから、きっと今後も二十代の若い人をお迎えすることはありません。新しい講師をお迎えするのは、昨年秋のリズムトレーニングの三輪さん以来です。三輪さんもかなり魅力的ですが今回も、どういうわけか素敵な方がやってきました。

 

それはとてもめでたいことですが、夏は体験レッスンの申し込みが少なくて、穏やかだとかおとなしいとか、私の立場から言っている場合ではありません。八月から神保町教室で募集が始まります。なん人も、いつどこでどんなチャンスが、きっかけが待っているかは分かりません。暑いからこそ、皆が動くのが億劫な今こそ、空いた募集枠が多い今だからこそ狙い目だ、とは断言できるのです。

 

それから、ちょうどその新しい講師としてお迎えする岸川さんを神保町教室へお連れしたその日に、どういうわけか久しぶりになかむらのぞみさんとお話をする機会がありました。彼女には、三年前までうたわないコース講師をお任せしていました。今後また再開することになるかもしれないので、時期尚早ですがコメントアウトしていた講師紹介を復活させておきました。